【単位05】修繕積立金査定の考え方と中古マンションの資産価値

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【学習】修繕積立金査定の考え方と中古マンションの資産価値

修繕積立金とマンションの資産価値

修繕積立金査定の考え方による中古マンションの資産価値とは

マンション査定士の修繕積立金査定では、24時間フロントにコンシェルジュがいたり、共用部分にジムやプールがある物件であっても、一概に 資産価値 が高い中古マンションであるとは判断しません。

一般に、中古マンションに限らず不動産の資産価値を計る上で最も重要なものは、「利便性」と言われています。

「利便性が良い」とは、立地であり、「立地が良い」とは、「都市に近い事」であり、更に「最寄り駅から近い」という事を言います。

修繕積立金の多寡と修繕実績で資産価値を判断

非常に利便性が良い立地の不動産であれば、その上にある建物の持続可能性が多少低くても、立地の良さで資産価値が補われる事もあります。

逆に、利便性が良い物件であっても、建物の修繕実績や修繕積立金の状況から考察して持続可能性が低い物件では、総合的に見て資産価値が低い中古マンションであると判断される事もあります。

ただし、マンション査定士が中古マンションの持続可能性を査定する際には、立地や利便性については一切考慮せず、建物の修繕実績と修繕積立金の状況のみに着目して判断します。

マンション査定士では、中古マンションとしての持続可能性を査定する際に、最も重視すべきものの一つが「修繕積立金の多寡」であると考えます。

「マンション全体で既に積み立てられている修繕積立金の総額」が計画的な大規模修繕工事を実施するうえで十分な管理組合である事が、中古マンションとしての持続可能性が高い物件であると判断します。


月額修繕積立金の妥当性

月額修繕積立金の妥当性を査定

修繕積立金は、中古マンションの計画的な修繕と維持管理を実施するための資金的な裏付けであることから、月額修繕積立金が極端に低い中古マンションでは、将来、大規模修繕工事を実施する際に資金不足になる可能性が出てきますので注意が必要です。

国土交通省の修繕積立金に関するガイドライン(1平方メートルあたりの修繕積立金月額平均値の目安)


修繕積立金に関するガイドライン ※出典:国土交通省 – マンションの修繕積立金に関するガイドライン P-7(pdf)
  • ①.15階未満:延床面積5,000平米未満:1平方メートルあたりの平均値218円
  • ②.15階未満:延床面積5,000平米以上~10,000平米未満:1平方メートルあたりの平均値202円
  • ③.15階未満:延床面積10,000平米以上:1平方メートルあたりの平均値178円
  • ④.20階以上:1平方メートルあたりの平均値206円

一般に20階以上の超高層マンションでは、大規模修繕工事の時に特殊な足場が必要になるだけでなく、共用部分の割合も高くなるため、修繕工事費が増大する傾向にあることから、20階以上で目安が分けられています。

15階から19階建てのマンションについては、15階未満の目安と20階以上の目安との間に収まるものと考えます。

従って、マンション査定士の修繕積立金査定では、15階以上19階未満の中古マンションの場合、延床面積に関係なく、国交省の修繕積立金ガイドラインにある15階未満:延床面積5,000平米以上~10,000平米未満の平均値202円と20階以上の206円の平均値である204円を1平方メートルあたりの修繕積立金月額平均値として計算する事とします。

マンション査定士の修繕積立金査定では、機械式駐車場や共用施設の有無については考慮しません。


修繕積立金査定の計算例

例えば、10階建て、延床面積5800平米、専有面積72.00平米の中古マンションでは、国交省の修繕積立金ガイドラインにある1平方メートルあたりの修繕積立金月額平均値202円で計算します。

この場合、「専有面積72.00平米×202円=月額14,544円」が国交省の修繕積立金ガイドラインで算出した月額修繕積立金の目安となります。

実際の月々の修繕積立金額が、この国交省の修繕積立金ガイドラインよりも著しく低い場合は、将来、修繕積立金不足により、必要な大規模修繕工事の実施が困難となる可能性が高いと言えます。

そのため、マンション査定士の修繕積立金査定では、月額修繕積立金の値上げが将来必要になる可能性が高い中古マンションであると判断します。


修繕積立金の方式

均等積立方式と段階増額積立方式

修繕積立金には、「均等積立方式」と「段階増額積立方式」があります。

国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインによると、均等積立方式よりも段階増額積立方式を採用しているマンションの方が多いとされています

特に、新築マンションの多くは、この「段階増額積立方式」が採用されています。

この「段階増額積立方式」は、マンションが竣工して新しいうちは、修繕積立金の金額が低いので、マンション購入後の家計への負担を低く抑えられるため、消費者は魅力的に感じます。

また、新築分譲マンションを販売する立場からしても、「段階増額積立方式」の方が、購入者にとって月々の負担額が低いので、販売し易いというメリットがあります。


段階増額積立方式のグラフ

しかし、「段階増額積立方式」は、文字通り、将来、段階的に修繕積立金の月々の負担額が増額するというものです。

新しいうちは、月々の修繕積立金が低くても支障はないかもしれませんが、築年数が経過した高経年マンションでは、月々の修繕積立金額が低い場合、次の大規模修繕実施予定時期までに、必要な金額が積立てられない可能性が出てきます。


修繕積立金が足りない場合の解説図

月額修繕積立金は、「段階増額積立方式」ではなく「均等積立方式」である事も、持続可能性が高い中古マンションを判断するうえでの指標のひとつとなります。
※参考:国土交通省 – 長期修繕計画作成ガイドライン (pdf)から作成


修繕積立金が足りないマンション

修繕積立金を増額できない物件が存在

段階増額積立方式では、月々の修繕積立金額が低く抑えられており、将来、計画的な大規模修繕工事を実施するためには、修繕積立金が不足する可能性が高く、そのためには、途中で月々の修繕積立金を増額しなければなりません。

しかし、月々の修繕積立金を増額する事は、区分所有者の家計への負担が増える事から、区分所有者から反対されて、月々の修繕積立金を値上げできない管理組合もあります。

その結果、大規模修繕工事を実施する時期になっても、既に積み立てられている修繕積立金の総額が不足しているため、大規模修繕工事を実施できない中古マンションも存在しています。

また、修繕積立金不足で大規模修繕工事を実施できない場合は、管理組合が金融機関から融資を受けるケースがあります。

その場合、その融資の返済の為に月々の修繕積立金額を値上げせざるを得ないという、結果的に区分所有者の負担が重くなっている中古マンションも存在します。

このように「修繕積立金」は、中古マンションの資金的な持続可能性を判断するうえで重要な指標のひとつとなります。