【単位06】修繕積立金の多寡

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【学習】修繕積立金の多寡

修繕積立金の総額が重要

既に積立てられている修繕積立金の総額の多寡

マンション全体で既に積立てられている修繕積立金の総額の多寡は、中古マンションの資金的な持続可能性を査定する上で最も重要な要素のひとつです。

しかし、管理会社や管理組合から、「マンション全体で既に積立てられている修繕積立金の総額」について具体的な金額を確認したとしても、修繕積立金の総額の多寡を判断する基準を知らなければ、その金額の多寡を判断することはできません。

マンション査定士の修繕積立金査定では、「国土交通省の修繕積立金に関するガイドラインを基に算出した数値」と「既に積立てられている修繕積立金の総額」を比較して修繕積立金総額の多寡を判断します。

既に積立てられている修繕積立金の総額が潤沢であれば、将来に亘って、計画的な大規模修繕工事を実施するための資金的な裏付けがある事となりますので、中古マンションとしての持続可能性が高い物件であると判断できます。

逆に、既に積立てられている修繕積立金の総額が著しく低い場合は、将来、管理組合が財政難となり、必要な大規模修繕工事を実施する事が困難となる可能性があるため、持続可能性が低いと判断する事が出来ます。


修繕積立金総額の多寡の査定方法

1.「一世帯あたりで既に積立てられている修繕積立金の総額」を算出
一世帯あたりの修繕積立金総額の算出方法

まずは、「マンション全体で既に積み立てられている修繕積立金の総額」から、「1世帯当たりで既に積立てられている修繕積立金の総額」を算出して、中古マンションの修繕積立金総額の多寡を判断し易くします。


一世帯あたりの修繕積立金総額の算出方法

マンション全体で既に積立てられている修繕積立金の総額に共有持分をかけて1世帯あたりの修繕積立金総額を算出します。

ここでは、共有持分と表現していますが、実務上は、登記簿謄本(全部事項証明書)に記載されている『敷地権の割合』を参照してください。


計算例

マンション全体の修繕積立金の総額12,000万円 × 共有持分580,000分の7,200
=1世帯あたり1,489,655円


このようにマンション全体で既に積立てられている修繕積立金の総額に共有持分をかける事により、一世帯あたりで既に積立てられている修繕積立金の総額を算出する事が出来ます。


修繕積立金に関するガイドライン

2.国土交通省の修繕積立金に関するガイドラインを基に修繕積立金総額の目標値を設定
修繕積立金総額の目標値 解説図

国土交通省の修繕積立金に関するガイドラインにある、1平方メートルあたりの月額修繕積立金の平均値を基に算出した修繕積立金額で、国土交通省の長期修繕計画ガイドラインで設定されている大規模修繕工事の周期である12年間にわたり積立てをした場合の総額を「修繕積立金総額の目標値」として設定します。


計算例

10階建て、延床面積5800平米、専有面積72.00平米の中古マンションの場合では、国交省の修繕積立金に関するガイドラインによると、1平方メートルあたりの月額平均値は202円となります。
従って、
計算式:専有面積72.00平米×202円=14,544円

この14,544円が国土交通省の修繕積立金に関するガイドラインの月額平均値となります。

国土交通省の長期修繕計画ガイドラインでは、12年周期で大規模修繕工事を実施していますので、マンション査定士の修繕積立金査定でも、この月額平均値を12年間積み立てた総額を修繕積立金総額の目標値とします。

計算式:14,544円×12か月×12年間= 2,094,336円

この数値が、国土交通省の修繕積立金に関するガイドラインと長期修繕計画ガイドラインを基に算出した、一世帯あたりの修繕積立金総額の目標値となります。

ただし、修繕積立金は、大規模修繕工事以外の修繕工事にも使用されるものですので、常に目減りします。

そのため、修繕積立金査定の考え方では、修繕積立金のおおよそ2割程度は、その他の修繕で消費されると仮定して計算する事とします。

従って、修繕積立金査定では、その目減り分を調整するために、この修繕積立金総額の目標値から20%減額します。

計算式:2,094,336円×80%=1,675,468円

過去12年以上前に大規模修繕工事を実施している中古マンションの場合は、この数値と、「1世帯当たりで実際の既に積立てられている修繕積立金の総額」とを比較して、その多寡を判断します。


最低残高の目安を決める

3.最低修繕積立金総額を設定
修繕積立金総額の最低残高を設定

「既に積立てられている修繕積立金の総額」は、大規模修繕工事を実施した年度で大きく目減りします。

もしも、大規模修繕工事を実施するごとに、既に積立てられている修繕積立金の総額が0円にリセットされてしまうようでは、大規模修繕工事以外に必要な設備などの修繕工事や突発的な修繕工事への対応が出来なくなります。

そこで、修繕積立金査定の考え方では、既に積立てられている修繕積立金の総額の残高の最低値の目安を「一世帯当たりの修繕積立金総額の目標値の30%」と設定します。

大規模修繕工事を実施した直後であっても、修繕積立金総額の目標値の30%以上は、修繕積立金の残高が必要であるという考え方となります。

計算式:一世帯あたりの修繕積立金総額の目標値×30%

計算式:一世帯あたりの修繕積立金総額の目標値:2,094,336円×30%=最低残高の目安:628,300円

大規模修繕工事を実施する度に、修繕積立金総額の残高が、この最低残高の目安(628,300円)を切ってしまうようでは、資金的な持続可能性が低い中古マンションであると判断することとなります。

このような中古マンションでは、修繕積立金額の値上げをしないと、大規模修繕工事以外に必要な設備などの修繕工事や想定外の修繕工事が実施できなくなる可能性があります。

4.「最後に実施した大規模修繕工事の時期」を考慮

修繕積立金は、大規模修繕工事を実施した年度で大きく目減りしますので、修繕積立金の総額を確認する際には、最後に実施した大規模修繕工事の時期を考慮する必要があります。

この場合、修繕積立金査定では、最後に大規模修繕工事を実施してから調査時点までの経過年数を確認します。

修繕積立金査定の考え方では、経過年数は大規模修繕工事を実施した年を1年目として計算します。

例えば、最後に実施した大規模修繕工事の時期が2011年の場合、修繕積立金査定を2020年に行なうと、経過年数は10年となります。


修繕積立金総額の目標値

5.大規模修繕工事を最後に実施した時から調査時点までの経過年数で修繕積立金総額の目標値を計算
経過年数で修繕積立金総額の目標値を計算

最後に実施した大規模修繕工事の年から調査時点の年まで、国交省の修繕積立金に関するガイドラインの月額平均値を積み立てた場合の総額を計算します。

計算式:14,544円×12ヶ月×経過年数10年=1,745,280円

この1,745,280円が、最後に大規模修繕工事を実施した時から現時点まで国土交通省のガイドラインの金額で積み立てた場合の修繕積立金総額となります。

ただし、修繕積立金は、大規模修繕工事以外の修繕工事にも使用されるものですので、常に目減りします。

従って、この場合も、その目減り分を調整するために、ここで算出した総額から20%減額した数値を「既に積立てられている修繕積立金総額」の目標値と設定します。

計算式:1,745,280円×80%=1,396,224円

マンション査定士の修繕積立金査定では、この1,396,244円を基準に既に積立てられている修繕積立金総額の多寡を判断します。


現状とガイドラインを比較

6.実際に「既に積立てられている修繕積立金の総額」と「国交省のガイドラインから算出した修繕積立金総額の目標値」を比較
修繕積立金総額の多寡を判定

例えば、先ほどの、実際に既に積立てられている一世帯あたりの修繕積立金の総額:1,489,655円を(A)とします。

最後に実施した大規模修繕工事から現時点までに国土交通省のガイドラインから算出した修繕積立金額を積み立てた場合の総額:1,396,224円を(B)とします。

計算式:(A)÷(B)-1
計算:1,489,655円 ÷ 1,396,224円 – 1
=0.0669
これをパーセント表示にしますと、6.69%となります。

マンション査定士の修繕積立金査定では、小数点第3位以下は切り捨てとします。

従って、既に積立てられている修繕積立金の総額は、国土交通省の修繕積立金に関するガイドラインを基に設定した修繕積立金総額の目標値よりも、6.69%上回っていると判断することが出来ます。

既に積立てられている修繕積立金の総額が、国土交通省の修繕積立金に関するガイドラインを基に設定した目標値を大きく上回る程、財務状況が潤沢な管理組合であり中古マンションとしての持続可能性が高い物件となります。

逆に、既に積立てられている修繕積立金の総額が国交省の修繕積立金に関するガイドラインを基に設定した目標値よりも下回っている場合、計画的な大規模修繕工事を実施するための資金的な裏付けが乏しい事になりますので、持続可能性が低い物件となります。

このように、マンション査定士の修繕積立金査定では、一見判断し難い、中古マンションごとに異なる修繕積立金総額の多寡を判断できるようにしています。


査定結果の振り分け

7.査定結果を5段階に分類

最後に、中古マンションの資金的な持続可能性を判断するための指標として利用しやすくするために、この修繕積立金査定の結果を5段階に分類します

1.非常に潤沢:+50%以上
管理組合で既に積立てられている修繕積立金の総額が非常に潤沢であり、将来、大規模修繕工事を実施するための資金的な裏付けが非常に高い中古マンションであると判断できます。
2.潤沢:+25%~+49%
管理組合で既に積立てられている修繕積立金の総額が潤沢であり、将来、大規模修繕工事を実施するための資金的な裏付けが高い中古マンションであると判断できます。
3.標準:-25%~+24%
管理組合で既に積立てられている修繕積立金の総額が標準的であり、将来、大規模修繕工事を実施するための資金的な裏付けがある中古マンションであると判断できます。
4.少ない:-50%~-26%
管理組合で既に積立てられている修繕積立金の総額が少なく、将来、大規模修繕工事を実施するための資金的な裏付けが低い中古マンションであると判断できます。
この場合、将来、段階的に月々の修繕積立金額の値上げが必要になる可能性があります。
5.不足:-51%以下
管理組合で既に積立てられている修繕積立金の総額が不足しており、大規模修繕工事を実施するための資金的な裏付けが非常に低い中古マンションであると判断できます。
この場合、早い段階で月々の修繕積立金額の値上げをしなければ、計画的な大規模修繕工事の実施が困難になる可能性があります。

修繕積立金査定結果の注意点

修繕積立金査定の結果の取り扱いについての注意点

中古マンションの持続可能性や資産価値を判断する際には、物件価格、利便性、住環境、共用部分の設備など様々な判断基準があり、その判断基準の一つが、「既に積立てられている修繕積立金の総額の多寡」となります。

「既に積立てられている修繕積立金の多寡」については、管理組合の運営方針、共用部分の設備や規模などによって物件ごとに異なります。

従って、この修繕積立金査定のアルゴリズムや計算方法は、修繕積立金の多寡の目安を判断する上での考え方のひとつであり、査定結果が全ての中古マンションに当てはまるとは限りません。

そのため、マンション査定士は、一概に修繕積立金査定の結果のみで、その中古マンションの持続可能性や資産価値についてを断定的に説明すべきではありません。