【単位07】中古マンションの構造体の耐用年数と寿命についての考え方

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【学習】中古マンションの構造体の耐用年数と寿命についての考え方

マンション構造体の寿命と耐用年数

中古マンションの構造体の耐用年数と寿命についての考え方

中古マンションの構造体であるコンクリートの寿命や耐用年数については、解説する立場や考え方によって大きく異なります。

国土交通省の「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」(平成25年9月26日)の報告書の中では、「RC造(コンクリート)の寿命にかかる既住の研究例」として以下のように様々な研究例が紹介されています。

RC造(コンクリート)の寿命に係る既往の研究例 鉄骨鉄筋コンクリート造及び鉄筋コンクリート造の構造体の耐用年数は、鉄筋を被覆するコンクリートの中性化速度から算定し中性化が終わったときをもって効用持続年数が尽きるものと考える。
鉄筋コンクリート部材の効用持続年数として、一般建物(住宅も含まれる。)の耐用年数は120年、外装仕上により延命し耐用年数は150年。
根拠論文名等:大蔵省主税局(1951)「固定資産の耐用年数の算定方式」

固定資産台帳の滅失データを基に、区間残存率推計法を用いて、家屋の平均寿命(残存率が50%となる期間)を推計した結果(2011年調査)、 RC系住宅は68年、RC系事務所は56年。
小松幸夫(2013)「建物の平均寿命実態調査」

※出典:国土交通省 – 「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」報告書 RC造(コンクリート)の寿命に係る既往の研究例 P-10 (pdf)

このように鉄筋コンクリート造の建物の寿命は考え方や調査方法の違いによっても異なります。

それでは、マンションの構造躯体の劣化とは、どの様な事を言うのでしょうか。

一般に、コンクリートの劣化とは、大気中の二酸化炭素がコンクリート内に侵入し炭酸化反応を起こすことによって、コンクリートが中性化する事を言います。


【指針参考資料7】躯体の劣化要因について 鉄筋コンクリート造等の住宅においては、中性化の進行により鉄筋が腐食し、コンクリートの剥離・剥落を生ずるという劣化過程を想定する。

※出典:国土交通省 – 【指針参考資料7】躯体の劣化要因について(鉄筋コンクリート造) P-10(pdf)

これらの事から分かるように、中古マンションの寿命とは、構造躯体であるコンクリートの劣化の進展状況が大きく関係します。


物理的劣化年齢査定の考え方

物理的劣化年齢査定においての構造体の持続可能性の考え方

マンション査定士の物理的劣化年齢査定では、コンクリートの劣化の進展を抑止して中古マンションの長寿命化を図るためには、計画的な大規模修繕工事の積み重ねが必要不可欠であると考えます。

鉄筋コンクリート造のマンションの法定耐用年数は、47年とされていますが、これは税法上の耐用年数となります。

従って、法定耐用年数47年とは、マンションの寿命ではありません。

日本建築学会(JASS5)では、コンクリートに「設計基準強度」「計画供用期間」「供用限界期間」を予め設定しています。

「計画供用期間」とは、躯体の計画耐用年数であり、大規模修繕不要予定期間とされています。

「供用限界期間」とは、建物を継続使用する場合、大規模修繕工事を実施する事により、延長使用可能な期間である事を表しています。

※出典:日本建築学会 – JASS5鉄筋コンクリート工事(pdf)


設計基準強度とは

「計画供用期間」と「供用限界期間」

マンション査定士の物理的劣化年齢査定では、この日本建築学会で設定しているコンクリートの「計画供用期間」と「供用限界期間」の考え方を基礎として、中古マンションの構造体の寿命や耐用年数についてを査定します。

鉄筋コンクリートの「設計基準強度」には、<短期><標準><長期><超長期>と計画供用の級が設定されています。
設計基準強度の図

<短期>
設計基準強度:18N/mm2→「計画供用期間30年」 「供用限界期間65年」
<標準>
設計基準強度:24N/mm2→「計画供用期間65年」 「供用限界期間100年」
<長期>
設計基準強度:30N/mm2→「計画供用期間100年」 「供用限界期間200年」
<超長期>
設計基準強度:36N/mm2→「計画供用期間200年」 「供用限界期間—年」

設計基準強度の考え方

設計基準強度の級が「標準」以外の場合

一般に、鉄筋コンクリート造の中古マンションの場合、計画供用期間は、標準の設計基準強度24N/mm2で建築されています。

ただし、近年に建築されたマンションでは、設計基準強度の級が「長期」で建築されている場合もあります。

逆に、昭和30年代~昭和40年代に建築された中古マンションでは、設計基準強度の級が「短期」相当の18~21N/mm2で建築されている場合もあります。

コンクリートの設計基準強度の級が「長期」か「短期」であるかについては、本来であれば、設計図書や施工記録を取り寄せて確認すべきですが、現実は、そのような書類を取り寄せる事は難しいと言えます。

築年数がまだ新しい物件であれば、新築時のパンフレットなどを確認して、100年コンクリートや100年マンションなどと記載されていれば、設計基準強度「長期」と判断する事が出来ます。

逆に、旧耐震基準で設計された高経年マンションでは、設計基準強度が「短期」相当である可能性があります。

しかし、設計基準強度が「短期」か「標準」かについては、マンションの高経年化が進むほど判別が難しいのが実状です。


物理的劣化年齢査定の計算

物理的劣化年齢は「標準」で計算

マンション査定士では、設計基準強度が「長期」や「短期」の場合であっても、設計基準強度「標準」の計画供用期間65年、供用限界期間100年で計算して物理的劣化年齢査定を行ないます。

ただし、設計基準強度が「長期」である可能性がある場合は、計画供用期間100年、供用限界期間200年である旨を査定結果に補足することが出来ます。

逆に、竣工時に旧耐震基準で設計された高経年マンションでは、耐震改修工事を行なっていたとしても、設計基準強度が「短期」相当の可能性がある事と、その場合は、計画供用期間30年、供用限界期間65年である旨を査定結果に補足する必要があります。

このようにマンション査定士の物理的劣化年齢査定では、コンクリートの設計基準強度は全て標準で計算しますが、物件の個別の状況により、査定結果に説明を補足して対応します。