【単位08】鉄筋コンクリートの寿命と構造体の持続可能性

単位08 TOP

【学習】鉄筋コンクリートの寿命と構造体の持続可能性

鉄筋コンクリートの寿命

鉄筋コンクリートの寿命と構造体の持続可能性

中古マンションは、高経年化が進むほど構造体に使われている鉄筋コンクリートの劣化も進展します。

鉄筋コンクリートの劣化による寿命とは、大気中の炭酸ガスがコンクリート内部に徐々に浸透してコンクリートが鉄筋の深さまで中性化し、内部の鉄筋の錆の進展を抑止できなくなる状態のことを言います。

中性化が進行してコンクリート内部の鉄筋が錆により腐食し、鉄筋が膨張して、周囲のコンクリートにもダメージを与えはじめると、コンクリート本来の強度が失われてしまいます。

マンション査定士の物理的劣化年齢査定では、大規模修繕工事を実施しても、このような不具合を是正できなくなった段階で、鉄筋コンクリートの寿命を終えたと判断します。


逆に、高経年化が進んだ中古マンションであっても、構造体に不具合が存在していなければ、鉄筋コンクリートの寿命は残っていると判断できます。

中古マンションは、適切な大規模修繕工事の積み重ねで、このコンクリートの中性化による劣化の進展を抑止する事が出来ます。


構造体の持続可能性

持続可能性が高い物件

欧米などの海外では、築100年を超える鉄筋コンクリート造の建築物であっても、適切な修繕工事により価値が保たれ健全に使用されているものも少なくありません。

国内においても、計画的な大規模修繕工事を積み重ねた中古マンションであれば、日本建築学会で設定している計画供用期間65年を超えても、健全に使用できる持続可能性が高い中古マンションが存在しています。

逆に、適切な修繕工事を怠っている持続可能性が低い中古マンションの存在も少なくありません。

この持続可能性が高い物件と、持続可能性が低い物件とを見分ける指標のひとつとして、マンション査定士の物理的劣化年齢査定を利用することができます。

なお、多くの中古マンションの構造躯体は、「鉄筋コンクリート造」または「鉄骨鉄筋コンクリート造」となります。

マンション査定士の構造体の物理的劣化年齢査定では、「鉄筋コンクリート造」または「鉄骨鉄筋コンクリート造」の構造体を前提としているため、「鉄骨造」の構造体については対応していません。


大規模修繕工事

マンション査定士の「大規模修繕工事」についての考え方

大規模修繕工事に関しては、建築基準法第2条第14号及び15号で定義が設けられています
建築基準法では、

  • 第2条第14号 大規模の修繕 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕をいう
  • 第2条第15号 大規模の模様替 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の模様替をいう
と定められています。

マンション査定士による物理的劣化年齢査定での大規模修繕工事の定義は、建築基準法で定める大規模修繕工事の定義とは異なります。

マンション査定士においての大規模修繕工事の定義は、「経年劣化と共に低下した構造体の性能を本来の性能に取り戻し劣化の進展を抑止する為にマンション全体で行なう修繕工事」としています。

具体的には、「マンション全体の外壁塗装工事」の実施履歴を確認する事が出来れば、物理的劣化年齢査定では、大規模修繕工事が実施されている中古マンションであると判断します。

「鉄部の塗装工事」、「建物の一部の塗装工事や防水工事」、「補修工事」のみでは、その修繕工事を大規模修繕工事の実施履歴として物理的劣化年齢査定の結果に反映する事は出来ません。


長期修繕計画

マンション査定士の「大規模修繕工事」を実施する時期についての考え方

国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインでは、12年周期で大規模修繕工事を実施する長期修繕計画の作成例が掲載されています。

このことから一般に、管理会社やデベロッパーが作成した長期修繕計画では、ほぼ12年周期で大規模修繕工事が計画されています。

長期修繕計画作成ガイドライン 大規模修繕工事は、世帯数が少ない小規模マンションであっても数千万円、世帯数が多い大規模マンションでは数億円の費用がかかります。

そのため、管理会社やデベロッパーの関連会社が大規模修繕工事を受注する場合は、たとえ劣化の進展が想定よりも遅い場合であっても、ほぼ必ず長期修繕計画どおりの時期に大規模修繕工事を実施しようとする傾向が強いと言えます。

長期修繕計画どおりに大規模修繕工事が実施されている事を確認できれば、適切に大規模修繕工事が実施されている中古マンションであると容易に判断する事は出来ます。

しかし、物件によっては、必ずしも長期修繕計画どおりに大規模修繕工事を行なう必要があるとは限りません。

多くの中古マンションの長期修繕計画では、ほぼ12年周期で大規模修繕工事の実施が計画されていますが、本来であれば、構造躯体の劣化状況に応じて、その都度、大規模修繕工事の実施計画を検討する必要があります。

管理組合によっては、大規模修繕工事の実施時期が近付くと、建物の劣化状況などを把握するために第三者の検査会社に建物診断を依頼します。

その診断の結果、想定よりも劣化の進展が遅い場合、管理組合は、大規模修繕工事の実施時期を見直して、長期修繕計画の予定よりも3年~5年程度、大規模修繕工事の実施時期を遅らせる事もあります。

大規模修繕工事の実施時期 デベロッパーや管理会社が作成した長期修繕計画通りの12年周期で大規模修繕工事を実施した場合、12年目、24年目、36年目までの間には、合計3回の大規模修繕工事を実施する事となります。

もし、大規模修繕工事の前に第三者による建物診断を実施して、長期修繕計画では、12年目に実施予定の大規模修繕工事を、5年先送りして17年目の大規模修繕工事であっても問題がないと判断できた場合では、17年目と34年目では、合計2回の大規模修繕工事の実施回数で済む事になります。

このような方法で大規模修繕工事の実施回数を減らすことが出来れば、修繕積立金の支出の節約となりますので、長い目で見ると資金的な持続可能性を高めることになります。

この事から、長期修繕計画どおりに大規模修繕工事を実施していなければ、必ずしも持続可能性が低い物件であると、ひとくくりに判断することはできません。