【単位09】物理的劣化年齢査定のアルゴリズム

【学習】物理的劣化年齢査定のアルゴリズム
査定結果の振り分け
物理的劣化年齢査定のアルゴリズム
マンション査定士の物理的劣化年齢査定では、大規模修繕工事の実施履歴と構造体の劣化に関わる不具合の有無の確認をします。
過去17年以内に大規模修繕工事の実施履歴を確認できて、構造体の劣化に関わる不具合が存在していなければ、物理的劣化年齢査定では、構造体の持続可能性が高いと判断します。
過去17年以内に大規模修繕工事の実施履歴を確認できたとしても、構造体の劣化に関わる不具合が存在するようでは、持続可能性が低いと判断します。
逆に、過去17年以内に大規模修繕工事の実施履歴を確認できない場合であっても、構造体の劣化に関わる不具合が存在していなければ、持続可能性は保持されていると判断します。
このように、構造体の持続可能性を査定するには、大規模修繕工事の実施履歴と構造体の劣化に関わる不具合の有無の組み合わせのアルゴリズムを考察する必要があります。
物理的劣化年齢査定の各ランクの定義と概念
マンション査定士の物理的劣化年齢査定では、大規模修繕工事の実施履歴や構造体の劣化に関わる不具合の有無などにより、査定結果をS・A・B・C・D・Eの6段階にランク分けします。

物理的劣化年齢査定:Sランク
実築年数17年以内で、まだ、一度も大規模修繕工事の実施履歴がなく、構造体の劣化に関わる不具合が存在していなければ、物理的劣化年齢査定では「Sランク」となります。
今後、大規模修繕工事を積み重ねる事により、「計画供用期間65年」「供用限界期間100年」を越えても構造体の持続可能性が高い中古マンションであると判断します。
ただし、現時点では、比較的新しい中古マンションですので構造体に不具合は存在していなくても、今後、大規模修繕工事を怠ると、物理的劣化年齢査定Bランク以下の物件になる可能性もあります。
実築年数17年以内で、1回目の大規模修繕工事を実施するまでは、構造体の劣化進展速度は、ある程度一定であると仮定して、物理的劣化年齢は、実築年数を採用します。
物理的劣化年齢、Sランクの計算方法
物理的劣化年齢=実築年数
- 定義 – 下記の①・②・③の全てに該当する場合
- ①.実築年数17年以内
- ②.第1回目の大規模修繕工事を実施する前
- ③.構造体の劣化に関わる不具合が存在していない
物理的劣化年齢査定:Aランク
実築年数に関係なく、構造体の劣化に関わる不具合も存在していなく、過去17年以内に大規模修繕工事の実施履歴を確認できれば、物理的劣化年齢査定では「Aランク」となります。
今後、大規模修繕工事を積み重ねる事により、「計画供用期間65年」「供用限界期間100年」を越えても構造体の持続可能性が高い中古マンションであると判断します。
実築年数が供用限界期間の100年になっても、大規模修繕工事の積み重ねの結果、構造体の劣化に関わる不具合が存在していなければ、更に延長使用できる可能性が十分にあります。
このような中古マンションの場合、物理的劣化年齢査定では、実築年数が「供用限界期間100年」に到達した段階で「計画供用期間65年」が到来すると仮定して実築年数に指数0.65をかけた数値を物理的劣化年齢としています。
物理的劣化年齢、Aランクの計算方法
物理的劣化年齢=実築年数×0.65
- 定義 – 下記の①・②の全てに該当する場合
- ①.過去17年以内に大規模修繕工事を実施している
- ②.構造体の劣化に関わる不具合が存在していない
物理的劣化年齢査定:Bランク
実築年数18年以上で、過去17年以内に大規模修繕工事の実施履歴を確認する事は出来ないが、構造体の劣化に関わる不具合も存在していなければ、物理的劣化年齢査定では「Bランク」となります。
現時点では、計画供用期間65年までの持続可能性は保持していますが、このままの修繕状況では、供用限界期間100年まで持続可能性を保持することができない構造体であると判断します。
計画供用期間65年を超えて延長使用するためには、出来るだけ早めに大規模修繕工事を実施してコンクリートの劣化の進展を抑止する必要があります。
このような中古マンションの場合、物理的劣化年齢は、実築年数を採用します。
今後、大規模修繕工事を積み重ねて、構造体の劣化に関わる不具合が存在しなければ、計画供用期間65年、供用限界期間100年を超えても、延長使用できる、持続可能性が高い物理的劣化年齢査定Aランクとなる可能性はあります。
ただし、このまま計画的な大規模修繕工事が実施されないまま、構造体の劣化に関わる不具合が発生した場合は、「物理的劣化年齢査定Dランク」になる可能性もあります。
物理的劣化年齢、Bランクの計算方法
物理的劣化年齢=実築年数
- 定義 – 下記の①・②・③の全てに該当する場合
- ①.実築年数18年以上
- ②.過去17年以内に大規模修繕工事の実施履歴を確認できない
- ③.構造体の劣化に関わる不具合が存在していない
物理的劣化年齢査定:Cランク
実築年数に関係なく、過去17年以内に大規模修繕工事の実施履歴を確認する事はできるが、構造体の劣化に関わる不具合が存在している場合、物理的劣化年齢査定では「Cランク」となります。
または、実築年数17年以内で、まだ一度も大規模修繕工事を実施した事がない比較的新しい物件であるにもかかわらず、既に構造体の劣化に関わる不具合が存在している場合は、物理的劣化年齢査定では「Cランク」となります。
このまま構造体の劣化に関わる不具合を是正せず放置し続けた場合は、「計画供用期間65年」までの持続可能性は保持できるかもしれませんが、供用限界期間100年まで延長使用することは困難な構造体であると判断します。
今後、構造体の劣化に関わる不具合を是正して、大規模修繕工事を積み重ねる事が出来れば、計画供用期間65年、供用限界期間100年を超えても延長使用できる、持続可能性が高い物理的劣化年齢査定Aランクとなる可能性はあります。
ただし、このまま構造体の不具合を放置した状態が続きますと「物理的劣化年齢査定Dランク」の中古マンションになる可能性もあります。
物理的劣化年齢、Cランクの計算方法
物理的劣化年齢=実築年数
- 定義 – 下記の①・②・③の全てに該当する場合
- ①.実築年数18年以上
- ②.過去17年以内に大規模修繕工事の実施履歴を確認できる
- ③.構造体の劣化に関わる不具合がある
- または – 下記の①・②・③の全てに該当する場合
- ①.実築年数17年以内
- ②.1回目の大規模修繕工事の実施履歴がない。
- ③.構造体の劣化に関わる不具合がある
物理的劣化年齢査定:Dランク
実築年数18年以上で過去17年以内に大規模修繕工事の実施履歴を確認できないうえ、構造体の劣化に関わる不具合が存在する場合、物理的劣化年齢査定では「Dランク」となります。
このままでは、コンクリートの劣化の進展を抑止する事が出来ませんので、「計画供用期間65年」「供用限界期間100年」よりも早く構造体としての寿命を迎える可能性が高いと判断できます。
このような中古マンションの場合、物理的劣化年齢査定では、実築年数が「計画供用期間65年」に到達した段階で「供用限界期間100年」が到来すると仮定して、実築年数に指数1.53をかけた数値を物理的劣化年齢とします。
ただし、今後速やかに大規模修繕工事を実施して構造体の劣化に関わる不具合を是正する事が出来れば、「計画供用期間65年」「供用限界期間100年」を超えても構造体の持続可能性が高い「物理的劣化年齢査定Aランク」となる可能性はあります。
物理的劣化年齢、Dランクの計算方法
物理的劣化年齢=実築年数×1.53
- 定義 – 下記の①・②・③の全てに該当する場合
- ①.実築年数18年以上
- ②.過去17年以内に大規模修繕工事の実施履歴を確認できない
- ③.構造体の劣化に関わる不具合がある
物理的劣化年齢査定:Eランク
大規模修繕工事の実施履歴の有無に関わらず、旧耐震基準の建築物で耐震改修工事が未了、または、その他の致命的な不具合が存在する場合、物理的劣化年齢査定では「Eランク」となります。
旧耐震基準の建築物で耐震改修工事が未了、または、致命的な不具合が存在する場合は、建築物の安全性に対しての不確定な要因が大きいため、「計画供用期間65年」「供用限界期間100年」に関わらず、震度6以上の大きな地震が発生した場合、構造体の重大な損傷、または、倒壊の可能性があるため、物理的劣化年齢査定を行なうことはできません。
ただし、今後速やかに致命的な不具合の是正工事や耐震改修工事を実施して、大規模修繕工事を積み重ねることが出来れば、「計画供用期間65年」「供用限界期間100年」を超えても構造体の持続可能性が高い「物理的劣化年齢査定Aランク」となる可能性はあります。
物理的劣化年齢、Eランクの計算方法
査定不能
- 定義
- 実築年数、大規模修繕工事の実施履歴の有無に関わらず、旧耐震基準の建築物で耐震改修工事が未了、または、致命的な不具合が存在するマンション。
以上のようにマンション査定士の物理的劣化年齢査定では、大規模修繕工事の実施履歴と構造体の劣化に関わる不具合の有無の組み合わせで査定結果を6段階にランク分けして、それぞれの計算方法で、物理的劣化年齢を査定します。