【単位10】給排水管の機能的劣化年齢査定

【学習】給排水管の機能的劣化年齢査定

給排水管の定義

給排水管の機能的劣化年齢査定

マンション査定士の機能的劣化年齢査定では、中古マンションの給排水管を4つの部位に分けて、それぞれの持続可能性を査定します。

  1. 共用部分の給水管
  2. 共用部分の排水管
  3. 専有部分の給水管
  4. 専有部分の排水管

本単位での学習では、便宜上、「給水管」と「排水管」を、まとめて「給排水管」、または、「配管」と表現します。

給排水管の持続可能性が高い物件と、持続可能性が低い物件とを見分ける指標のひとつとして、機能的劣化年齢査定の考え方を利用することが出来ます。


給排水管の寿命

配管の寿命と耐用年数

配管の寿命は耐用年数の定義によって異なります

給排水管の耐用年数は、配管の種類や材質によって異なりますが、それだけではなく、解説している文献や考え方によっても違いがあります。

同じ材質の配管であっても、耐用年数が15年と解説している文献もあれば、耐用年数は、25年や30年、または、35年や40年以上と解説している様々な文献が存在します。

これら耐用年数の違いの理由は、解説する立場や考え方によって「配管の寿命の定義」が異なる事が要因であると考えられます。

まず、配管の耐用年数を15年で解説している文献の多くは、税法上の耐用年数の事を指していますので、実際の配管の寿命とは異なります。

耐用年数を25年や30年で解説している文献の要因は、この時期あたりから、配管の老化現象による漏水などの不具合が発生し始めるからです。

「配管に不具合が発生した時点が耐用年数である」と定義をするのであれば、この耐用年数25年~30年を採用するのが適当であると言えます。

耐用年数を35年や40年で解説している文献の要因は、この時期あたりから、配管の老化現象による不具合が頻発して部分的な補修では配管の機能を保持できなくなる、という、実使用年数に到達することとなり、更新工事が必要になるからです。

「配管の老化現象による不具合が頻発して、部分的な補修では配管の機能が保持できなくなる時期」が耐用年数であると定義をするのであれば、この耐用年数35年~40年を採用するのが適当であると言えます。

再生事例調査報告書

国土交通省の「マンション専有部分等の配管類更新による再生事例調査報告書」 の中では、配管類の更新工事の時期について「配管類の更新工事実施までの管理開始後の経過年数を調べると、25年~35年が多い」と解説されています。

出典:国土交通省 – 管理組合によるマンション専有部分等の配管類の更新事例調査(pdf)


寿命の限界

機能的劣化年齢40歳が配管の寿命

マンション査定士の機能的劣化年齢査定の考え方では、この国土交通省の報告書で解説されている25年~35年の時期を超えても、不具合が存在していなければ、配管の機能は保持されていると判断します。

給排水管の機能的劣化年齢の概念

機能的劣化年齢査定では、配管の機能的劣化年齢が40歳に到達した時点で、配管の機能的な寿命を終えたと判断します。

中古マンションの給排水管の耐用年数と寿命の考え方

マンション査定士の機能的劣化年齢査定では、給排水管の耐用年数40年と、機能的劣化年齢40歳の考え方は異なります。

給排水管の機能的劣化年齢査定では、機能的劣化年齢が40歳を目安に配管を新しいものへ交換する時期としています。

この配管を新しいものへ交換する工事を、「更新工事」と言います。

共用部分にある給排水管も、構造体と同様に適切な維持管理と修繕工事の実施により、配管に不具合が存在していなければ、耐用年数40年を超えても十分に使用できる可能性があります。


機能的劣化年齢査定

機能的劣化年齢査定の概念

マンションの給排水管は、人体の血管に例えられます。

定期的な健康診断を受けて、健康的な生活を送ることにより、実年齢が50歳の人であっても、血管の健康年齢は30歳という人がいるように、中古マンションも実築年数が50年であっても給排水管の修繕工事が実施されていて、かつ、配管に不具合が存在していない物件であれば、給排水管の機能的劣化年齢は、30歳ということもあり得ます。

機能的劣化年齢査定の概念

人体では、血管の老化が進行しても、全ての血管を新しい人工血管に入れ替えるようなことは現在の医療技術では出来ませんが、中古マンションでは、構造にもよりますが、老朽化した給排水管を新品に更新工事をすることが出来ます。

給排水管を新品に更新工事をした場合、実築年数が50年経過した中古マンションであっても、給排水管の機能的劣化年齢査定では、1歳にリセットされる事となります。

給排水管の機能的劣化年齢査定

中古マンションの給排水管は、新品に更新工事をする以外にも、ライニング更生工事という修繕方法もあります。

ライニング更生工事とは、配管内部の汚れを落とした後に特殊塗装やコーティングをする事で配管の延命を目的とした修繕工事です。


ライニング更生工事を実施する事により配管は、おおよそ10年間の延命効果が期待できます。

ライニング更生工事の施工保証期間は、一般に10年とされているものが多いですが、中には、優れた技術や素材を用いた施工で20年保証しているものもあります。

ただし、マンション査定士の機能的劣化年齢査定では、一般に多く普及されている10年の施工保証を基準に計算する事としています。

また、古くなった配管でライニング更生工事を複数回実施すると、汚れを落とす際に配管内部が削られ、継ぎ手部分や肉厚が薄くなった箇所に穴があく可能性があります。

当協会で調査した限りでは、国内において、ライニング更生工事を2回実施した中古マンションの事例は確認することはできましたが、3回以上実施した事例は現時点で確認できておりません。

その事から、マンション査定士の機能的劣化年齢査定では、ライニング更生工事の最大実施回数は2回までとしています。

ライニング更生工事を1回実施した場合は、実築年数、または、更新工事後の経過年数から10年を引いた年数を機能的劣化年齢とします。

従って、ライニング更生工事を1回実施した場合では、実築年数が40年経過した中古マンションであっても、給排水管の機能的劣化年齢査定では、30歳と算出される事となります。

給排水管の機能的劣化年齢査定

過去にライニング更生工事を2回実施した場合は、実築年数、または、更新工事後の経過年数から20年を引いた年数を機能的劣化年齢とします。

このようにマンション査定士の機能的劣化年齢査定では、一概に築年数だけで配管の寿命を判断するというものではなく、修繕工事の実施履歴と配管の不具合の有無の組み合わせで給排水管の持続可能性を査定します。


専有部分の給排水管

専有部分の機能的劣化年齢査定の考え方

専有部分も共用部分も給排水管の「機能的劣化年齢査定」の考え方は同じです。
マンション査定士は、専有部分内の天井や床下に点検口がある場合は、そこから給排水管の経路を目視で確認する必要があります。


共用部分の給排水管は、区分所有者の単独判断で修繕する事は出来ませんが、専有部分の給排水管については、原則、区分所有者の単独判断で修繕する事が出来ます。

しかし、一部の中古マンションの専有部分の給排水管では、給排水管が床下スラブを貫通して下層階の天井裏や地階を通っている場合があります。

例えば、天井の点検口を覗いた際に、上層階の給排水管を目視で確認できるようであれば、専有部分の給排水管であっても区分所有者の単独判断で更新工事を実施することが出来ない中古マンションである可能性があります。

床スラブ貫通のイメージ

平成12年3月21日の最高裁判決(最高裁平9(オ)第1927号 判夕1038-179)において床下コンクリートスラブを貫通して、下層階の天井裏にある排水管は「専有部分に属さない建物の附属物」にあたり区分所有者全員の「共用部分」にあたるとし、上層階の損害賠償責任を否定した裁判例があります。

この裁判例から、マンション査定士の機能的劣化年齢査定では、このような構造の給排水管の物件の場合、専有部分の天井裏にある給排水枝管は、共用部分の給排水管として考えます。

従って、このような構造の給排水管の場合は、共用部分の給排水管の修繕工事と一緒に専有部分の天井裏にある給排水枝管も、更新工事やライニング更生工事などの修繕工事を実施したかの履歴も確認する必要があります。

中古マンション市場では、専有部分を新築同様にリノベーションした物件や、内装の一部のみを改修した表層リフォーム物件など、さまざまな物件が数多く流通しています。

専有部分の「内装」「造作」「意匠」「設備」などの状況は、内覧すれば、誰でも自身の価値観である程度判断する事ができるものです。

また、専有部分の内装や設備などは、費用は掛かりますが、区分所有者の単独判断で、比較的容易に改修できます。

この事から、マンション査定士では、専有部分の内装や設備については、あえて査定対象から外して、一般に判断し難い「専有部分の給排水管の修繕状況」と「給排水管の不具合の有無」のみに着目して機能的劣化年齢査定をおこないます。