【単位13】マンション査定士による書類調査

【学習】マンション査定士による書類調査
物件概要と管理形態の確認
マンション査定士による書類調査
マンション査定士が、修繕積立金査定、物理的劣化年齢査定、機能的劣化年齢査定を行なうためには、エビデンスとなる書類で物件の情報を確認する必要があります。
1.物件概要の確認
修繕積立金査定を行なう場合は、中古マンションの「専有部分の面積」、「延床面積」、「共有持分」、「築年数」を確認する必要があります。
これらは、中古マンションの登記簿謄本(全部事項証明書)で確認できます。

2.管理形態の確認
マンション査定士が各部の劣化年齢査定や修繕積立金査定を行なう場合は、そのエビデンスとして、管理会社や管理組合に記録されている書類などを取り寄せる必要があります。
中古マンションには、必ず管理組合が存在し、多くの管理組合では、管理組合の運営に必要な業務などを外部の管理会社に委託しています。
一部の中古マンションでは、管理会社に管理を委託していない、「自主管理」の物件が存在します。
管理形態が「自主管理」の中古マンションの場合は、日常の維持管理や予算の管理についてを区分所有者の中から役員を決めて自ら運営しています。
まずは、査定対象の中古マンションの管理形態が、「委託管理」か、「自主管理」かを確認する必要があります。
管理形態が「委託管理」の物件の場合は、管理会社へ連絡をする事により、査定に必要な書類を取り寄せる事が出来ます。
自主管理の中古マンションを調査する場合は、調査をするためには、誰に連絡を取れば良いかについてを、最初に区分所有者へ確認をする事により調査の効率が上がります。
書類調査
「管理会社」や「管理組合」から取り寄せる書類

マンション査定士が「修繕積立金の状況」と「修繕工事の実施履歴」を確認する際には、管理会社や管理組合から以下の1~3の書類を取り寄せる必要があります。
- 「長期修繕計画」が記載されている書類
- 「修繕記録簿」や「修繕履歴表」など修繕の実施履歴が記載されている書類
- 「重要事項調査報告書」などの修繕積立金の状況が記載されている書類
ただし、管理会社や管理組合の多くは、区分所有者、または、区分所有者と媒介契約を締結した不動産会社でなければ、上記の書類を発行しません。
そのような時には、宅建業者であれば区分所有者と媒介契約を締結する。それ以外の場合は、区分所有者経由で必要書類の発行依頼の手続きをする事になります。
書類で確認する内容
マンション査定士は、下記の1~5の事項を確認して、各査定のエビデンスとします。
- 直近に実施した大規模修繕工事の「時期」と「工事内容」
- 直近に実施した共用部の給水管と排水管の更新工事の「時期」と「工事内容」
- 過去に実施した共用部の給水管と排水管のライニング更生工事の「時期」、「回数」、「工事内容」
- 修繕積立金の月額、マンション全体で既に積立てられている修繕積立金の総額
- 管理組合の金融機関からの借入
書類を発行しない管理組合の場合
自主管理の中古マンションの中には、書類を発行しない、若しくは、そのような書類が存在しない管理組合があります。
この場合、エビデンスがないため、マンション査定士は、修繕積立金査定や各劣化年齢査定を実施することはできません。
専有部分
専有部分の給排水管更新工事の実施履歴を確認するために必要な書類
専有部分の給排水管更新工事の実施履歴を確認する場合は、区分所有者に以下の書類を用意してもらう必要があります。
- 専有部分の改修工事を行なったときの「請負契約書」「工事仕様書」「工事見積書」「設計図」などの書類
- 区分所有者が購入時の「売買契約書」「重要事項説明書」「販売図面やパンフレット」などの書類
- その他、専有部分の改修や修繕の実施内容が記載された書類
上記のいずれかの書類の中から過去に専有部分の給排水管の更新工事やライニング更生工事などの修繕工事を実施した履歴を確認して、専有部分の給排水管の機能的劣化年齢査定を行ないます。
ただし、区分所有者からのヒアリングだけでは、専有部分の給排水管修繕工事の実施履歴のエビデンスにすることはできません。
従って、これらの書類がない場合は、専有部分の給排水管の機能的劣化年齢査定を行なうことはできません。
専有部分で確認する内容
マンション査定士は、下記の1~2の事項を確認して、専有部分の給排水管の「機能的劣化年齢」を査定します。
- 直近に実施した専有部分の配管の更新工事の「時期」と「工事内容
- 過去に実施した専有部分の配管のライニング更生工事の「時期」、「回数」、「工事内容」
注意点
書類調査のコツと注意点
中古マンションの修繕積立金の状況、大規模修繕工事の実施履歴、給排水管の修繕履歴、不具合の有無、致命的な不具合の有無、旧耐震などの確認は、主に管理会社、管理組合、区分所有者などで保管されている情報をエビデンスに査定します。
そのため、書面による情報がない場合は、修繕積立金査定、物理的劣化年齢査定、機能的劣化年齢査定を行なうことはできません。
一級建築士やホームインスペクターとの連携

マンション寿命査定報告書(マンションアセスメント)を作成する際には、必ず現地確認をする必要がありますが、一級建築士やホームインスペクターなどの建築の専門家による建物診断は実施しません。
マンション査定士は、一級建築士などの建築の専門家ではありませんので、書類調査の結果は、建築の専門家と見解が異なる場合があります。
建物の損傷や不具合などの専門的な調査が必要な場合は、積極的に一級建築士やホームインスペクターなどの建築の専門家と連携して業務をすすめる必要があります。
調査のコツと注意点
中古マンションの修繕履歴と維持管理の実施状況の調査のコツは、最初に、区分所有者から、聞き取り調査をして、出来る限りの書類を預かる事です。
区分所有者が中古物件として購入していた場合は、購入時の重要事項説明書や重要事項調査報告書などがあると調査が捗ります。
しかし、古い重要事項調査報告書などの書類は調査の段階で役に立ちますが、最新のものを管理会社から取り寄せなければ、調査ミスを誘発しますので注意が必要です。
中古マンションの修繕履歴と維持管理の実施状況の調査は、ある程度の経験を重ねると効率よく調査出来るようになります。